ものかきブンちゃん

読んだもの観たもの書いたもの

ドラマ『ブラック校則』Huluの方の素晴らしさ

日本の変な校則にちょっと興味が湧いて調べてたら『ブラック校則』というドラマに出会った。

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観初めてすぐに、セリフの弾みや人物たちの微妙な掛け合いに魅了され「これは一体誰が書いたんだ」と無性に気になって調べると、あ、なるほど、あの『セトウツミ』を書いた漫画家、此元和津也の脚本だった。

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『セトウツミ』の漫画は読んだことがないが、映画は観た。それも何も知らずに偶然見つけて観たもんだから、その衝撃は今でも覚えている。二人で座って喋ってるだけやん! 映画っていうか、漫才を見ているような感覚。でも最高に楽しい映画だった。

『ブラック校則』も二人の高校生が海辺に座って、延々と会話をしているのが基本的な設定で、物語は回想のような形式で見せられる。Sexy Zone佐藤勝利演じる小野田創楽、そしてKing&Princeの高橋海人演じる月岡中弥、この二人が繰り広げる会話の愉快さは、ちょっと観てもらわないと言葉で説明するのは難しい。

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日テレで放送された本編は、髪の毛の色、自転車通学禁止、アルバイト禁止など、様々な校則に触れながらも、重くならず軽快で愉快に生徒たちの思いを伝えていく。笑いながら軽い気持ちで観ながらも、校則ってなんだろうと考えさせられるところが、こういう問題性の曖昧な社会問題を扱うにはちょうどいい気がした。

好きだったところはたくさんあるけど、一つあげるとすると、労働者たちのラップ。三人の個性あふれる外国人労働者と一人の日本人労働者が、悩んでいる高校生たちにラップで打つけるど正論の社会批判や自己尊重の精神。七五調でしか喋らない生徒会長との掛け合いなどは鳥肌が立つほど鮮やかで、何度見ても飽きない。

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もちろん、この日テレの本編の七話もとても面白いのだが、このドラマに興味がある人に僕がお勧めしたいのは、むしろHuluの方で配信された四話だ。

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バックストーリーというか、メインの人物たちの感情に焦点を合わせて、海辺での会話と回想というギミックがない分、一つ一つのシーンに集中して人物の気持ちを汲み取れる。

特に心に刺さるのは、ハーフで地毛が茶色なのに、地毛証明書を出すか黒く染めるかしないと登校を認めてもらえない町田希央と、その母親との関係。

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これも観ないとわかりづらいが、学校で自分の自然な在り方を否定されて苦しんでいる娘と、自分が生んだ娘の生まれたままの姿を問題視されて、その娘の苦しみを見ていなければならない母親、その二人の間でどんな会話が生まれるのか。それはとても日常的な、しかしとても正直で真っ直ぐなことばかり。二人のなんてことない会話の力強さに、僕は何度も微笑みまじりのため息をついた。

小学校4年性の頃からカナダで教育を受けた僕は、当たり前だが、全員の髪の毛の色が違う学校に通った。高校(セカンダリースクールだったが)では服も自由だったし、座る席も自由、受ける授業も自由、生徒が運転してきた車のための駐車場もあったし、自分がどんな人間であって、どんな生き方をするかについて口出しされたことは一度もない。だから髪の毛の色を一つに制限するルールの発想が不思議でならない。

みんなが同じであることのメリットはいったい何? そしてなんで女子と男子の違いははっきり分けているの? そういう根本的な発想が、いいか悪いかは別にして、よくわからない。

カナダの学校では女子もほとんどがズボンを履いていた。そういう気分の日にはスカートを履くこともあるだろうが、ズボンの方が楽なのだろう。だから女子には男子にはない、スカートという特別な「選択肢」があっただけで、それを履くこと自体が「女子」のアイデェンティティになるわけではなかった気がする。なのに、日本では中高生の少女は(なぜ中高生の時だけなのかは不明だが)強制的にスカートをはかされる。誰かその理由を知っている人がいれば教えて欲しい。何故?

話が逸れてしまったが、『ブラック校則』というドラマは、特別校則がどうのこうの論じることはしない。ただ物語を楽しんで、自分なりに考えればいい。

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生徒会長の書き初めは「遵守」。この言葉の面白いところは、「守る」という言葉が入っているところ。ルールが人を守るのか、人がルールを守るのか、混乱させてしまうような言葉ではないだろうか。

学校は特別な場所だと思う。一つの国の全ての若者に、将来への予習として、何かを与え、何かを伝えることができる場所。そんな学校だからこそ、ルールなんかよりもっと守るべきものがあるのではないだろうか。生徒を守ってあげるだけではなく、生徒たち自身が自分を守る力を付けられるようにサポートすることが大事なのではないだろうか。

Huluの方の『ブラック校則』の微妙な心の動きが、僕にこんなことを思わせてくれた。